謳花 装花士 秋田玄さん

今回は、謳花の装花士として活躍する秋田玄さんに、ドライフラワーについてお話を伺いました。

はじめに、今の試みの以前の経験を教えてください。

謳花の装花士 秋田さん

元々学生時代には花を専門に勉強したことも修行したこともなく、経済・経営学部だったこともあり、花とは無縁の普通の大学生活を過ごしていました。 植物に興味をもったきっかけは、大学の講義の一環でビジネスアイディアをスピーチする大会に参加した際、植物を議題にする場面があったからです。

その時に、植物に触れたり、学ぶことが多かったことと、当時のガーデニングブームと相まって、興味を持つようになりました。

当時のガーデニングブームというと2014年ごろですよね。

そうですね。当時は多肉植物や古物とを合わせて飾る、西洋の片田舎の雰囲気を表現するものが流行り始めた頃でした。実家がリフォーム業だったので、家具やインテリアには興味があって。あと、とにかく古いものが元々好きでしたので、そこから一気にのめり込んだのを覚えています。

秋田さんはご実家はリフォーム業ということですが、やはりそういった環境にいたから、花といってもアレンジメント…というよりは、謳花のクリエイションにある様な什器制作や、いわゆる空間装花の方向にいく影響もあったのでしょうか?

空間を飾る、という点ではその部分が強いと思います。例えば、木材を古っぽくペイントしたり、古い家具の作りを真似て再現して什器を作って花を飾ってみたり…。
実家の手伝いの中で知ったものづくりのスキルが応用しやすいジャンルだったのもあります。あとはやはり親の背中をみて、自分でも空間を作ってやってみたい…と思ったのが謳花のクリエイションに繋がる考え方のベースになったと思います。

工房にはドライフラワーと、国内外や時代を問わず、自身で収集した古い物が多く並ぶ

他にも、僕はデザインや花を専門的に勉強してきたわけではない、という部分が実はコンプレックスでもあって。学生のときに植物を少しかじっただけの人間からすると、花ってとても敷居が高いイメージでした。
でも、もっと自分が納得いくようなかっこいい空間が作りたい!と思っていたので、どうしても空間に合うような花を扱ってみたかったんです。

特に僕なんかは、本当に花そのものを届けたい、もしくは例えば生け花の様に花のスタイルや流派を伝えたい、というよりは、花で世界観を伝えたいという気持ちが強くて。

そういう意味では、当時はあまり浸透していなかったドライフラワーは敷居が生花より低く感じられたこともあって、ドライフラワーでの空間、そして古いものとの組み合わせた演出って僕にとってはすごく入りやすいジャンルだったんです。

なるほど。お話を伺っていると、なぜ秋田さんが謳花でドライフラワーと古いものを組み合わせる様な作品が多いのかなんとなく理解できました。世界観という意味では、色味も雰囲気も、時を経て魅力を増す、という点も、それぞれ共通している気がします。

そうですね。 僕は道で朽ちた鉄とか立ち枯れた花を拾ってそれを作品に使うこともありまして。アンティークや、古物にその道のプロの方々のように詳しい訳でもないのですが漠然と古いものの雰囲気が好きで、自然とそのような流れになりました。
華道でも、立ち枯れた草花や割れた器をあえて使うことがあるとは思いますので…その点では割と花の世界では自然なことなのかもしれませんね。

実際に自身で収集した草花で制作した イブキ[ibuki]

その共通点は面白いですね!独自の制作を行っている秋田さんですが具体的には今はどのようなことを中心に取り組んでいるのでしょうか?

謳花に入るまで紆余曲折あったのですが、主体会社であるソウアンは各種イベント会場や展示会ブース等のデザイン・設計・施工事業を行っています。

ご縁があって入社させていただき、そこから僕がドライフラワーをやりたいということを会社に伝えたところ、社をあげてのプロジェクトの一環としてスタートしたのが謳花です。大好きな古いものと、ドライフラワーでかっこいい空間をつくりたいな、から始まって、今はBtoBで店舗什器や空間にお花を添える事を中心に行っています。

特に謳花は、ドライフラワーで社会問題は解決できないかもしれませんが、社会問題自体に意識が行くきっかけとなるようなプロジェクトを大切にしています。例えば、雑草と言われてしまう草花や、花が咲いて食用にできない野菜や、剪定された後に廃棄されてしまう枝物などを活用して、装飾や作品に取り入れたりしていますね。

花以外にも、花と組み合わせるマテリアルは、廃棄されてしまう建材や家具の端材なんかを使ったりもしています。
会社として営利を考えながら、それを届けるのは難しいけれど、今の時代は大事なことだなと思います。

ドライフラワーに長く関わっていると、花を飾るってなにか、花が近くにあるってどういうことなのか、とか、そもそも花の力ってなんだろうとか、禅問答みたいになってきます。

禅問答…人はそれぞれ人生を考えるための手段が違う、と聞いたことがありますが秋田さんはドライフラワー だったのかもしれないですね。

そうかもしれないです。花って綺麗なのはもちろん、古代からずっと人とともにあって。花は感謝や繋がりを表現する手法のひとつでもあるので、じゃあ感謝や繋がりってそもそもなにか、とか、花と人間とで、より良い関係はなにか…とか、考えるうちに自然と自分を見つめ直す機会が増えてきて、自分の弱さも気づかされる時があります。そういう意味では、人生を考えていることでもあるのかもしれません。

活動の一環として道端の草花を束ねるワークショップを開催することも

近頃、廃棄花、なんて言葉も主流になってきましたが、秋田さんとしては、なぜドライフラワーが求められていると思いますか?

難しいですね…!例えば、SDGsなんていうと小難しく聞こえるかもしれませんが今あるものをもう一度、見直す、そして、使う、みたいな考え方ってドライフラワーにとても似ていると思うんです。例えば、僕が古いものや廃材、立ち枯れした草木を楽しんでいる様に、実はドライフラワーがやってきたこと、やれることと今の時代に求められている考え方はマッチする部分が多気がします。

そういう部分で何か新しい試みができたらなと。

コロナに入ってから、ドライフラワーが着目される機会も増えてきた様に思いますが、いかがでしょう?

コロナだからドライフラワーだ、とは思っていないですね。普遍的に本当はずっと前からあった、ブームではなくて、根源的に認識していたものが徐々に広がってきたのかなと。謳花も、そういう風に時代に求められているところに着目して働きかけていけたらいいなと思っています。

言われてみると、最近のSDGsやアップサイクルなんかもそういった部分では同じなのかもしれないですね!

そうですね。その精神は”もったいない”なんて言葉が昔からあったくらい、日本に根源的に根付いていることだと思うし、流行り廃りのことではないと思います。その精神に則っているからこそ、生活の中で活用できる物事が知恵として意識的に定着した考え方だと思います。
今、謳花ではドライフラワーで繋がるコミュニティサイトの企画もあるのですが、そういう風に皆がもっている想いを広げて定着させていける場にしていきたいです。そして、コロナが明けても、その考えは推奨していきたいです。

例えば、花で何かこれからやりたいことはありますか?

今は難しいけど、ワークショップをやりたいです。例えば、僕たちは廃棄物と組み合わせていろんなものを作っているのもあり、例えばビーチクリーンにいって、そこにあるもので参加者の方々と一緒に作品をつくる…とか。以前、知り合いの古民家の整理を手伝った時に出た古物や廃材をいただいたことがあり、それらも作品に使わせてもらっています。

そうやって、つながった人たちもまた誘って廃材活用のワークショップをやりたいです。
他にも、ZASSOという吉田健二さんという方の道端の雑草と呼ばれてしまう草花を中心にフィールドワークをする活動があって。他にも庭を整備をした時に出た草花で何か作ったり。庭や造園は花の業界と近いので、同じ植物を扱う仲間として何か一緒にやりたいですね。

あとは、花き業界というと生花がメインで、ドライフラワー業界というのはそもそも確立されていない。
ドライフラワーって、フラワーアレンジメントとしても、クラフト素材としても、インテリアとしても幅広く使えるので、業界として成り立つように、もっともっと広がっていく様なことできたらいいと思います。

割れた平皿を、花で継ぐことで新たな作品に

最後に、これから秋田さんの様にドライフラワーで何かしてみたい人へ一言お願いします。

うーん、してみたいならなんでもチャレンジしてみてた方がいいと思います。
今ならyoutubeでもinstagramでもお花の組み方やドライフラワーの作り方なんかもいっぱいあるし、なんならそこから花材だって買える時代です。
堅苦しくなく、やってみようよ!と思います。自分なんか特に、アカデミックにそういったことをやってきてない、という事に縛られてきました。だけど、そんなの関係ない、とにかくやってみればいい、ということをドライフラワーをやってきて考えさせられました。結局、正解はないから、今は、みんなで知識を共有しながらとにかくやってみよう!ってマインドです。

僕は、その敷居も垣根もない感じがすごくいいなと思って。ドライフラワーも同じだと思います。まだまだ未開拓のジャンルだから、みんなで実験しまくっていきたい。特に、これからドライフラワーを始めたいと思った人は、親でも友達でも恋人でも…作ったブーケや作品なんかをとりあえず、プレゼントしてみるといいと思います。

知人の個展祝いに、駐車場で雑草を束ねて手土産にしたとか

ちょっと話は変わりますが、ずっと疑問があって。例えば卒業式の時に、先生への色紙も手作り、お礼の品もみんなで悩んで考える、教室や黒板だってみんなで飾る…のに、なんで花だけお金を渡して花のプロにお任せなんだろうって。愛の告白も、指輪を悩みに悩んで、手紙も直筆で書いて…花は花屋さんにお任せなんだよなあって。生花でもドライフラワーでもいい、とにかく、自分で好きに束ねてみる、そして、渡してみる。そしたら自分でつくるのも渡す喜びも楽しめるし、もっとやってみたくなると思います。その経験はきっと忘れられない思い出になるんじゃないかなぁと。それが花を誰かに贈る原点だと思います。

目から鱗です!確かにそうですね。”あなたをイメージして花束を作ってもらったの”より、”あなたをイメージして花束を作ったの”の方がグッときますね。
花の原点であり、もっというと人が誰かのために何かする、という根源的な部分の素敵さがありますね。自分もやってみたくなりました。

ありがとうございました!

最後に、秋田さんの”笑顔とドライフラワー”を
お名前 秋田 玄 [あきた げん]
出身 神奈川
休日の過ごし方 飼い犬と遊ぶ
好きな花 矢車草とか涼しげな花